元SNH48専属司会者兼バラエティー班責任者アージーさん回想録(6)

上海SNH48の専属司会者兼バラエティー班の責任者だった「阿吉(アージー)」こと張競さんが新天地を求めて運営会社を円満退社した。退職後、中国ツイッター(新浪微博)で「回想録」をツイートしている。上海SNH48が結成されたばかりの頃の様子がよく分かって、異常に面白いので順次日本語試訳する。

いってみれば阿吉さんはSNH48の歴史の証人。SNH48ファンは必読!

回想録第六回

原文はこちら

以前は暴露ネタはないと言ったけれど、毎回みなさんの前の彼女たちをこうして思い出すたびに、仕事の裏の真実の姿と巨大な差があるので、今でもまだ僕はショックを受けて不安で眠れないことがある。じっさい耐え切れずにあらいざらい書いてしまいたくなる。今回はその例外ということになる。あるアイドルたちの知られざる一面を明かしたい。

まず陸婷から。みんな知っているように嘉興路(訳注:上海SNH48劇場の住所)のタフガイで、どんなことがあっても余裕で安定している様子だと思っているだろう。しかし言っておくけれど、『SNHello』第一季番外編の『嗚吒誕生記』の撮影が終わったあと、僕の彼女のイメージは崩れ落ちた。

あの日、朝早くから劇場でメイクを終えて、メンバーたちがクルーといっしょにロケ地に行った。脚本では別撮りが多かったし、昼間のちょうどいい光で撮る必要があったので、まず「男一」の馮薪朵の部分を急いで撮影した。

しかし『記念品』というマイクロムービーのメイキングを観たファンの方はきっと分かると思うけれど、馮薪朵の演技は素晴らしいのに(床の上をのたうち回るとか)、笑ってしまってNGになるのが何回か事前に予測できない。加えて、ロケ地を探すのも手間取って、撮影の予定時間がのびのびになってしまった。

唯一無二の誰にも代えがたい気質があったので、陸婷の当時の役は沙悟浄だった。ちょっと思い出してほしい。あの衣装やアクセサリの上に、もじゃもじゃのヒゲで、まるで通りすがりの人の目を引く景勝地のようになって、沙悟浄は特に喜んで、絶えず役柄に磨きをかけていた。

しかし丸一日つらい思い出待たされて、ヒゲも引っ付かなくなって、太陽が沈もうという時間になって、ようやく陸婷の撮影部分が回ってきた。まだ2カットを撮影しただけなのに、現場の光線はもうダメになって、クルーは撤収せざるを得なかった。

翌日、陸婷は他の仕事があったので、彼女が参加できないまま残りを撮影し、臨時の決定として彼女の沙悟浄役を取り消すしかなくなった。そのおかげで、沙悟浄はたちまち怒りを爆発させて、二度と撮影クルーのところへ戻って来なかった。演出家とアシスタントについて近くをひととおり探したが見つからない。

もう夜7時過ぎだし、ロケ地は劇場近くの公演だし、陸婷は上海の人だしということで、僕らは相談の上、二十歳を過ぎた地元民だから、危険なことはないだろうと、先に劇場にもどろうと、ゆっくり機材を片付けてから、集団で公演から出てきた。

撮影クルーを見送って、馮薪朵曾艷芬にタクシーを拾ってあげようとしたとき、突然公演の向かいの道路でひとりぼっちの女性がいるのを見かけた。一人でバス停に立ってぼんやりしている。

「えっ、陸婷、どうしてそこにいるんだい?」 僕は驚いて喜びながら彼女に急いで声をかけた、「てっきり劇場にもどったのかと…」

彼女は僕を見ると、すぐ背中を向けて、二歩歩いてから立ち止まり、僕が追いかけてくるのを待ち、また振り返ると歩いて行った。つまり、アイドルの恋愛ドラマで恋人どうしがケンカして、主役の男性がヒロインの後を追ってあれこれ質問し、ヒロインがプンプンして背を向け、また歩いていくという情景が再現された。

でも人が大勢行き来する大通りで、実際すごく恥ずかしかったけれど、どうやってオチを付ければいいかしばらく分からなかった。何度かそうやった後、結局彼女はワァ~と泣き出してしまったのだ!

「えぇ~ん、タクシー呼びたくても、お金がないの…」

その一瞬、まるで時間が固まって、周りの通行人がみんな静止したようだった。

たぶんどんな韓国ドラマの脚本家でも、こういう場面でこんな場違いなセリフを書けないだろう。

あの日、大通りで大泣きした陸婷は、完全に嘉興路の用心棒のヘッドではなく、そんな役割は捨てて、いじけた子供になっていた。通りすがりの人たちは不思議そうな目で見て、ヤキモキしながら一日中ムダに待ったのに、デートをキャンセルされた役のようにいじけていた。

でも10分後には、この子供は、また大皿のパイチャンチーや、カニみそ豆腐などをおごってもらうよと言って、泣いて化粧を崩しながらも大声で笑っていた。

もしああいう陸婷を見たことがあれば、いつも勝気な兄貴というのはただのイメージだけで、彼女もやっぱりいじけてなぐさめてもらいたがっている普通の女の子になることもあると分かるだろう。

良心に誓って言うが、あの頃が本当に懐かしい!

あの日のことと言えば、特に感謝しなければいけないのはやっぱり錢蓓婷だ。舞台に上がると次々ウィットが飛び出すけれど、舞台から下りると生真面目なこの子は、あの日一日中大きなヒゲをのりで貼り付けて、夜に公演にも出た。後から聞いたところでは、あの日宿舎に帰ってから、彼女の顔は赤く腫れあがってひどかったらしい。

もう一人、莫寒についても書いておくべきだろう。『SNHello』第1シーズンから、サイパンロケの『窮途陌路』や『超神偶像』、『48狼人殺』まで、他にも無数の営業の仕事で、彼女とはいちばん多く仕事をした古い戦友だ。でも彼女は、プライベートではみんなの前の従順でやさしくて大人しいウサギのようなイメージとは完全に違う。この人の強情さは、やはり牛で例えるのがぴったりする。

グループバラエティーの収録で、彼女があの『達人ショー』で滑ってしまったメンバーだと知っていたので、筋道だったしゃべりには安心していた。加えてSNH48チームSIIの隊長をつとめていたので、司会者としてもとても理想的な人選だった。

ただ彼女の話し方は、僕はいつも台湾なまりで、観客が聞い分かりづらいのではないかと心配していた。プロデューサとして彼女を呼んでなまりを直そうと思った。すると、彼女は舞台上でのあの人当たりの良さとは完全に違って、まっとうな理屈でこう言った。「いいえ、どこが台湾なまりなんですか?これは私たち貴州のなまりですよ。私たちはこういう話し方をするんです!」僕は貴州人ではないけれど、読者の皆さん老干妈がこういうなまりで話している場面を想像してみて下さい。当時僕は、この子はかなり頑固だと思った。(訳注:老干妈は中国人なら誰でも知っている調味料の名前。貴州省産)

初めて江蘇衛星テレビの旧正月特番に出演したとき、僕らは当時3チーム(訳注:SNH48チームSII、NII、HII)すべてを派遣した。新たにチームSIIに三期生袁丹妮が入ったが、違うダンスの教師が『RIVER』を教えたので、リハの時振り付けが少し違っていた。莫寒は自らダンス教師の役を買って出て、休憩のときもずっと袁丹妮に付き添って練習していた。

楽屋の休憩の合間を縫って、出演者がメイクをしている時間以外、食事の時間も含めて、僕らにはもうだいたい振り付けはできたように見えたので、彼女たちに急いで食事をして休憩するように言った。しかし莫寒は聞かなかった。ずっと振り付けの非常に細かいところがしっかり決まるまでやめなかった。そういう気持ちが袁丹妮の心も動かして、二人はずっと休憩もせず振り付けの練習をしていた。

一年目のドキュメンタリーを観たみなさんはきっと覚えていると思う。あの日臨時で出演して、袁丹妮は緊張のあまり泣き出した。でもその後はみなさん知っているように、彼女は2チームの兼任になった。いつでも様々なポジションを担当して優秀なパフォーマンスを見せている。僕はいきなり厳しい要求をする「頑固者」の鬼のキャプテンは、莫寒なしに語れないと思う。

ただ僕が思うに、「鬼の」キャプテンは同時に天使との結合体でもある。サイパンで水着EPのメイキングを撮影したとき、初日に彼女たちは先に客船へ生写真を撮影しに行って、僕らは別のロケ地を見に行った。僕らが客船で合流したとき、彼女たちはちょうど撮影を終えていた。

僕らが入っていくと、水玉模様の水着を着た莫寒の姿しか見えず、彼女はメンバーたちを先導して船室に突進していった。そのとき、まさに青春のフェロモンを目のあたりにした感じだった。じっさい鼻血が出そうな勢いだった。当時僕は心の中で莫寒のファンを恨んだ。君たちは腰がくびれてないとか、見るところがないとか言ってるんじゃない。僕はまったく期待していなくて、ずっとロケハンをしていたせいで、彼女の素晴らしい水着姿を見逃してしまったじゃないか!

それから、気持ちが盛り上がった流れで、僕たちは続けて『窮途陌路』を撮影した。日程の関係で、みんなは3日間で5、6時間しか眠らなかったが、美しい景色のおかげで、みんなの状態は良かった。しかしほどなく莫寒は頑固になり始めた。バーベキューの食材を買う部分で、脚本の段取りの都合から、メンバーたちの経費を少し増やした。

Kikiは物分かりが良くてそれまでのバラエティー感を発揮して買いまくった。だが莫寒はそうせず、休憩のときも食事しようとせず、Kikiと口げんかして不機嫌になった。「今まで2日間あれだけ苦労してお金を節約して、3人で一つのお弁当を食べることまでしたのに、こんな役に立たないものを買うからでしょ。いまは予算オーバーでしょ?!」

「ねぇ、私たちバラエティー番組を撮ってるんだよ…」、Kikiはすごくいじけているように見えた、「本当の競争をしてるわけじゃないんだから…」

「じゃあルールなんていらないでしょ、規則があると私に言っておいて、守らなくていいってどういうこと?!」、そう言い捨てた。じつは莫寒の言ったことは明らかに僕に怒っていた。どうしようもなくなったが、最後にはKiki、錢蓓婷、僕の三人でいっしょになだめて、彼女はようやく無理やり昼食を食べた。

ルールと勝敗は、彼女にとってそれくらい重要で、この点は彼女の負けん気の強さ、意地っ張りなところだ。

実は、スタッフも彼女の意地っ張りなところに強い印象を持っていた。いつも彼女にドキュメンタリー撮影のために付き添っているカメラマンも含めて。ドキュメンタリーの中でチームメイトをかばおうと、彼女が前に出て「撮らないで!」と叫んでいたように、いつもカメラマン君の心に影を落としていた。

それから『超神偶像』や『狼人殺』などの場組の演出チームも、彼女が自分自身満足いかないと考えると、チーム全員で彼女を囲んで数時間相談しても、どうしても番組に出ようとしないこともあった。

彼女の意地っ張りなところについてこんなふうに理解があるから、去年の総選挙で彼女にトロフィーをわたすとき、舞台上の彼女が目を赤くして涙がこぼれるのを何とかこらえていたのを見て、僕はとても複雑な気持ちになった。

意地っ張りといえば、莫寒は見るからに意地っ張りで、ダメなものはダメというタイプだが、もう一人、口では聞き分けがいいのに、行動は別というメンバーがいる。それにこのメンバーは「お湯を飲む」のがキライだ。みなさん僕が誰のことを言っているかはもう分かるだろう。

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