広州GNZ48初の全曲オリジナル公演チームNIII『第一人称』に好き勝手コメントしてみる(3)

広州GNZ48として初の全曲オリジナル公演、チームNIII『第一人称』の各曲に好き勝手コメントする記事の続き。今回で完結。

M10.少女革命

マイナーコードのEDMだが、どちらかと言うとシンセの音色にエフェクトを多用するというより、各種シンセの原音をそのまま鳴らす1980年代のエレクトロポップに近いところを狙ったdaft punkに似た「清潔な」音作り。EDM形式のアイドルポップとして妥当だと思う。

曲の構成に特筆すべきことはない。転調なし。ただサビが前半と後半に分かれていて、後半の「shut up! shut up!」がフックになっている。サビのメロディーが二種類あるのがすでに当然になって来ている点に、SNH48グループの楽曲水準の向上がはっきり分かる。

この曲の後半の間奏のダンスが、この公演『第一人称』の予告映像に出てきたあのカッコいいステップだったというわけだ。広州GNZ48チームNIIIも、同じ広州GNZ48チームZと同様、ダンスがそろっていて素晴らしい。

M11.Never Land

繰り返しになるが、この日の公演はエイプリルフール特別公演で、セットリストを16曲目から1曲目まで逆順に上演して、公演中にもいろんなところをわざと逆にしている。

この曲はサビ始まりだが、その冒頭のサビを歌うとき、普段はメンバーが舞台の最前部に座って、舞台から脚を下ろして歌う。すると客席最前列の超VIP席の観客と至近距離になる、というのが、この曲の演出で観客をびっくりさせた部分。

この日はエイプリルフール特別公演なので、冒頭でメンバーが客席に背を向けて歌っている(笑)。

この曲も編曲がとても美しい。冒頭のサビの後半のアコースティックギターのストロークが聴こえてくる部分は、ちょっと感動する。

観客がきっちり掛け声(MIX)を打てる、十分な長さのイントロ。その後も楽器の数が少ないAメロで、やはり観客が声援を送りやすい編曲。Bメロは典型的な「パーンパパン」リズム。

その後に現れる実際のサビは、イントロと違って明確なバックビート乗りで、メロディーの譜割りも意図的に変えられている。

次の間奏はワンコーラス目からツーコーラス目へのつなぎとしては、長過ぎるくらいの長さで、やはり観客が心ゆくまで声援を送れる編曲になっている。ツーコーラス目の後のアウトロも、十分な長さ。

転調や凝ったメロディーは無いけれど、やはり、こういう舞台上と客席のインタラクション(互動)が、48系グループの劇場公演の基本だと感じさせる。

M12. We Can Try

この曲もイントロは、定型の声援(MIX)がちょうどおさまる長さで作られている。Bメロは典型的な「パーンパパン」リズム。サビも典型的なアイドルポップ。サビの最後に移行転調があるが、このコード進行は非常によく使われるクリシェ。

さすがにこういう曲が2曲連続すると飽きるのは飽きるけれど、公演全体の構成からすると、11曲目と12曲目。つまりアンコール前なので、あまり曲調に変化を持たせず、あえてちょっと休憩といった時間帯。

そうは言っても、ツーコーラス目の後の間奏はディストーションギターを主体としながらも、途中でシンセリードが入ってきて、手抜きのない編曲。

その後、サビのリフレインの冒頭、伴奏の楽器の数が減るお決まりのパターンだが、突然ビートが細かくなる部分が良いアクセントになっている。そしてサビの最後のリフレインもリズムパターンが16ビートに変わる。このあたりの編曲も手抜きがない。

そして意外なことに、最後の最後に「We Can We Can We Can Can Try」というメロディーのないフックに当たる部分が現れる。

陳腐なアイドルポップに聴こえるけれど、同じメロディーに対して、曲の最初から最後まで少しずつ異なる編曲が付けられている、非常に凝った曲。

M13. Ba Ba Ba

メンバーが腕を使って「G」「N」「Z」の文字を作るイントロから始まる。かなり長めのイントロだが、コードは2つだけという思い切った編曲。メンバーは広州GNZ48チームNIIIの公式スティックライトを持っている。

Aメロにはエレキギターとともにアコースティックギターのコードストロークも入って、やはり透明感のある音作りになっている。

そしてAメロ冒頭からいきなりフックのメロディーになっている。「飆呀飆呀飆呀」「朦朧朦朧」「快要快要」という単語の反復がそれ。このフックが実はサビのCメロのフックの伏線になっているという、実はかなり凝った作曲。

Bメロはリズムパターンは変わらないが、厚めの女性コーラスが入って来てアクセントになっている。メロディーは反復なしで流れるようにサビへ進んでいく。

Bメロにメロディーの反復がないことで、Aメロの単語の反復によるフックと、次のサビのフックがより鮮明になるように作曲されている。こういう点もうっかり聞き流してしまうけれど、実はよく考えて作られている。

サビはAメロのフックを受けて、フックのためだけのメロディーと言っていい。ここは冒頭の「Ba Ba Ba Ba Ba Ba」さえあれば成立する。

その後の間奏は、間奏の最初の部分のドラムスが何故か目立つなぁと思ったら、その後、チェンチェン(劉倩倩 Liú Qiàn Qiàn( リョウ・チェンチェン) あだ名: チェンチェン GNZ48 Team NIII
 SNH48 6期生
 1994/11/28福建省生まれ
)がエアードラムを演奏する振り付けになっている。この間奏も8ビートでギターソロは完全にクリシェだけれど、ポップスの気持ちよさはこういうところに存在する。

ツーコーラス目のAメロ始まりがブレイクになっているのも、非常によくあるパターンの編曲だが、ポップスが何度も使って、完全に陳腐なこの種の編曲がなぜ60年経っても色褪せないのか、SNH48公演曲の制作チームはもう一度よく考えてみるべきだ。

そしてブリッジの部分に突然RAPが入ってきて驚く。しかもHIP HOPのようなバックビートにアクセントのあるクールなRAPではなく、オンビートの広場舞的なコテコテのRAP。

しかしオンビートのRAPだからこそ、観客がいっしょに「没有办法」をメンバーたちといっしょに叫べる。これでアンコール開けなのだから、盛り上がらない訳がない。

ここでアンコール(別名トイレの時間)が挟まって、以下はアンコール後の最後の3曲。

M14. 君のために

いきなりオープンハイハットではなくクラッシュシンバルでカウントが入るという意外な始まり。ピアノとストリングス風の音色のシンセと、オンビートを踏み続けるバスドラムの組合せも意外。

次のイントロのメロディー部分の明るめのリードシンセは、アタックのある音を逆回転させたように聞こえる、アタックのない音色で、やはり意表を突く。

そしてAメロがいきなり、ほぼピアノのコードだけのブレイクで始まる。反復なしのAメロ(というよりA1とA2に分かれていると言うべきか?)から、Bメロで早くもBメジャーからAbメジャーに三度転調という贅沢な作曲。

サビのCメロの後半は、くり返し登場する五度の音(Eb)が印象的に聞こえるようにメロディーが作られている。

ワンコーラス目の後の間奏も、ディストーションギターはお決まりだが、ストリングスも使われており、やはり透明感がある。

ツーコーラス目の終わりには、ブリッジのDメロまで用意されている。分厚いコーラスと、Ab⇒G⇒Ebというメロディーがフックになった美しいブリッジ。これはよく出来たブリッジ。

その後にすぐにサビのリフレインに入らずに、間奏が来るのは編曲の勝利。ここでもストリングスがディストーションギターの背後で鳴っている。最後のサビのリフレインに入る前に、1小節カットされている編曲も上手い。

サビのリフレインの後のアウトロが、ディストーションギターのバックがピアノの分散和音という、この曲で初めて登場する編曲。しかもアウトロはトニックではなく五度の音(Eb)で終わる。

なぜ五度の音で終わるか。それはサビの最後にこの五度の音(Eb)をくり返し登場させて、このEbだけでこの曲のフックになるように作曲されているからだ。

しかもアウトロの最後の最後が、オープンハイハットの連打と、Abメジャーの平行調のFマイナーのトニックのピアノ単音で終わる。

つまりさっきの五度の音(Eb)が鳴るEb7というコードは、トニックのAbに解決するのではなくて、実は平行調のFマイナートニックに解決するためだったのか、という予想を裏切る結末。

イントロがオープンハイハットのカウントで始まり、アウトロが同じくオープンハイハットの連打で終わるというのも、曲全体が左右対称に作られているということ。

最後まで全く手抜きなし。この曲も陳腐なアイドルポップのように聞こえるけれど、ものすごく計算された曲。

M15. Ne3er give up

ガラッと雰囲気が変わって電子音がメインの編曲で、作曲はサビ始まり。サビから間奏はベースラインが下がっていくクリシェで気持ち良い。

イントロからAメロへいきなりEbメジャーからC#メジャーへ長二度の変則的な転調。Aメロの反復部分の細かい電子音の編曲が気持ち良い。

Bメロは典型的な「パーンパパン」のリズム。その間ずっと伴奏で細かい電子音が鳴り続けている。

サビでは再度長二度転調でEbメジャーに戻り、感動的なくらいキャッチーな「smile smile smile」「fight fight fight」というフックが付いたメロディー。このフックが全て五度のBbの音。

先ほどの曲では五度の音は隠れたフックだったが、この曲では明確にフックとして使われている。

それにしても、長二度転調があまり違和感なく聞こえる編曲は素晴らしい。

ツーコーラス目終わりの間奏が、4小節⇒2小節⇒4小節⇒4小節と変則的な構成に何気なく編曲されているところも良い。

しかも、最後の間奏の後は、普通ならブリッジのDメロか、サビのリフレインだが、ここで再びC#メジャーへ長二度転調で戻って、何とBメロが来るという、これも予想を裏切る曲構成。

Bメロをブリッジの代わりに使うことが出来るのは、Bメロからサビに進むときに再度、長二度転調するからだ。

また、C#からEbへ上昇する長二度転調なので、ポップスのサビの最後のリフレインで、たまに聞く、曲全体を盛り上げるための転調の役割も兼ねている。最後のギターは四度の音(Ab)。わざとトニックをはっきり聞かせないところが良い。

M16.こんな私

この曲は広州GNZ48のファーストEPの最後に収録されていた曲なので、解説は省略。もちろん公演の最後にふさわしい名曲であることに間違いはない。

以上、広州GNZ48として初の全曲オリジナル公演、チームNIII『第一人称』全曲に好き勝手コメントしてみたが、どうすればいいんだろう。

一曲も捨て曲がない。どの曲もアイドルポップとして、ほとんど文句の付け所がない。

広州GNZ48はEP収録曲にも同じことが言えるが、透明感のあるアイドルポップとして、楽曲の水準が非常に高い。正統派アイドルポップ、透明感と清潔感のあるアイドルポップという点で、上海SNH48、北京BEJ48の両方に勝っていると個人的には思う。